赤いポスト、手触りのある表札、よく鳴く鳥の声。
20年分の“当たり前”に灯りを点けて回ると、胸の奥がひりっとしました。
それでも私たちは一歩進むと決めた――詳しい経緯は書きませんが、ここからは別れを静かに区切り、暮らしを設計し直すための実務です。私の実体験と手順を置いていきます。
別れの儀式
この章は感情の揺れを否定せず、できる行動だけを書き残します。最後の数時間、涙が出ても構いません。長く引き延ばさないのがコツです。
- 全灯の写真:すべての部屋に明かりをつけ、玄関から1枚。
- ありがとうメモ:ポスト/表札/シンボルツリーへ1行ずつ。紙と写真で残す。
- 庭の小さな命へ:手を合わせて「ここで生きてくれてありがとう」。
- 音の記録:玄関の開閉音、床のきしみ、鳥のさえずりを各30秒録音。
- 1点だけ現物:家を象徴する小物を1つだけ持ち出す(残りは写真化)。
悲しみは消しゴムで消えません。形を変えて持ち歩けるようにする――それが儀式の役割でした。
罪悪感・喪失感の波を扱う(3アクション)
夜中にふっと波が来ます。叱らず、扱い方を決めておくだけ。
- 名づける:「これは“喪失の波”。今は10分だけ向き合う」
- 体を先に整える:白湯 → 深呼吸3回 → 肩をぐるり10回。
- 予定に戻す:いちばん小さな家事(洗濯たたみ/ゴミまとめ)に体を乗せる。
家族への声かけ
- 夫へ:「あの家への想いに、私も深く感謝してる。いま悲しいのは当然だよ。今夜10分だけ、全灯の写真を一緒に見よう」
- 息子へ:「あの家は私たちの宝物。場所は変わっても思い出は一緒。今度“好きだった場所ベスト3”を教えてね」
思い出は“濃く少なく”
薄く広く残すと、いつまでも片づきません。濃さで残すに切り替えます。
- アルバム1冊:見開きに写真3枚+短文(30文字目安)。
- 動画:30秒×5本以内(玄関・リビング・庭・通学路・台所の音)。
- 実物:A3箱1つ。日付ラベル+次の判定日=1年後を書いておく。
新居に馴染む14日チェック
迷いが疲労を生みます。初期の行動シナリオを固定。
Day1–3
・掃除は「入口/シンク/寝具」だけ(全部はやらない)
・朝・夕に同じ道を10分歩く(光と音に身体を合わせる)
Day4–7
・生活動線の固定:洗濯・ゴミ動線・調味料の置き場を一度で決める
・安全地図:内科・薬局・スーパー・バス停を徒歩で回り、横断ポイントを記録
Day8–14
・習慣の核を1つ:夕方の散歩 or 朝の白湯
・連絡先カード:夫/病院/管理会社(財布と玄関に1枚ずつ)
・家計の更新:家賃・光熱・通信を新額で家計アプリ/ノートに反映
小さな実務リスト(後回しにしない最短コース)
- 郵便転送(1年)/運転免許・マイナンバー住所変更
- 電気・ガス・水道の名義と支払方法、ネット回線の解約/切替
- 火災保険の解約or移管、NHK・新聞
- 主要クレカ・銀行の住所変更(アプリで一気に)
私の実体験(要約)

引っ越しの日、夫は全灯の家を撮りました。背中の重さに胸がきゅっとなりました。
アルバム1冊と短い音の記録、そして「ありがとう」のメモ。儀式を短く区切って済ませ、新居では14日チェックだけに集中。
いま、小さなアパートで静けさを取り戻しています。悲しみは消えないけれど、持ち運べる形になりました。
いまの気持ち
正直に言えば、まだ揺れます。
それでも、今日できる小さな整え方を積み上げれば、暮らしは少しずつ軽くなります。
私はいま書ける範囲で、これからも手順だけは置いていきます。
無料テンプレート
コメント